グリム、さくらトイス、トンボ屋、たなべ、土佐、坊や、ポストホビー、ポニーランド……
これらは私が生まれ育った街 新所沢にあったプラモデル屋とおもちゃ屋の屋号だ。
でも、今や現存するのはグリムのみ。
時代の波とでも云うのでしょうか、その荒波に飲まれていつの間にやら寂しく閉店してしまったんだった。
少年時代、これらの店を自転車であちこちグルグルと廻るのが楽しかった。
お金がなくても行った。
行けば気の合う友達がいた。
ただ見ているだけ、それで良かった。
でも、それが今はおもちゃ屋と云えばトイザらスの一択のみ。
それとネット通販ってとこか。
昔は良かった……だなんてことは言いたくないが、この点に関しては私の少年時代の頃の方が良かったんじゃないかなと思う。
これはもう全国的な流れなのだろうか。
今の町並みは、子供たちが愛着が持てないような気がしてちょっと寂しい。
そんな気がする。
こんなこと時折しみじみ考えてしまうのは、私も完全無欠のおっさんになった証拠だろう。
『人にはそれぞれ事情がある……』
これは、春頃に読んだ宮本輝さんのエッセイにあった言葉。
この考え方が身につくと、いろいろと日常で人に優しくなれる。
以前、お客さんとこんな話をした。
「狭い道を運転をしていて、対向車が来たとき。
さあどうぞって車を寄せて相手に道を譲るのですが、そのときに向こうから何のリアクションもないと腹が立つんですよ。
手をちょいと挙げるぐらいも出来ないのかって!」
そう鼻息荒い私にお客さんはこう返した。
「私が首ヘルニアを患っているとき、まさにそういう場面に遭遇したんですよ。
でもね、首が痛過ぎて手も挙げられなかったし会釈すら出来なかったんです。
だから私はそういう瞬間に出くわしたときは『あ〜あの人はきっと首ヘルニアなんだろうな!』と思うようにしたんです。
そうすると、それじゃあまあ仕方ないな!って思えるんですよ」
これには笑った。
そして、とても納得した。
なんか、嫌な態度を取られたり、嫌な言葉を言われたりしたとき。
「あ〜きっとあの人にはなんらかの事情があるんだろうな……抜き差しならない止むを得ない、避けることない事情が……多分きっと……」
そう思えたら腹立たしくならないし、むしろちょっと優しい気持ちになれたりして、その上なんだかありがたい気持ちにもなるから、人の気持ちって不思議だ。
要は気持ちの持ちよう……そういうことなのだと思う。
連日灼熱地獄ではあるが、それもきっとのっぴきならない事情があるからだろう。
ふふふ、なかなかやるじゃないか……
この酷暑に対して、そう思えれば完全勝利だ。
本日は定休日。
思いっきり積極的に休もうと思う。
それでは股旅。