小さな芸術家

「ヘッドフォンに色塗っていい?」

息子にそう訊かれたとき、正直最初は「え……出来たらやらないで欲しいんだけど……」と思ったのですが、懇願するような息子の眼差しビームを浴び、まぁ別にいいかと思い直して許可することにしたのでした。

やった〜!

と息子は、はしゃぎ、躊躇なく下書きなしでサササと塗り始めるのをハラハラ眺めていたのですが、

あれれ?これ結構良いかも!

と風向きが変わり、出来上がったのを見たら、最初は気が進まなかった自分の狭量さが情けなくなったのでした。
だって凄く良いですもの。
なんかこう、気持ちがパッと明るくなったんですもの。

私の好きなアニメ(というか絵本でもある)の『おべとも学園』の登場人物である “ぼうしくん” ってキャラクターがおりまして。

“ぼうしくん” は飄々としてて無口で、でも絵がとても上手でしてね。
友だちが落ち込んでいるときや、怒っているときに、サササと絵を描いて、場を和ませ、人を慰め、笑顔を引き出し、なんかちょっと優しい気持ちにさせるんです。

私は、それこそが “芸術家” の役割なんだろうな〜と、ぼんやり “ぼうしくん” から学んだんです。

で、今回の息子のヘッドフォンアレンジを見て、私は息子と “ぼうしくん” を照らし合わせたのでした。

こういうこと、これからも沢山して欲しいな。
床屋のオッサンは、そんなワガママな思いを密かに抱いたのでした。

股旅。

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