二十数年前、『田宮模型の仕事』という本を読みましてね。
その製品化への道のりに胸が熱くなり、思わず買ってしまったのが、このタミヤの「HONDA F-1 1/12」。
箱のデカさとパッケージのカッコ良さに痺れまくったのですが、開けてみてションボリ。
どう足掻いても、自分には作れない難しいキットだと諦めたのでした。
で、それから二十数年が過ぎ。
再びプラモデル作りに夢中になり、どうにか趣味にまで昇華させつつある床屋のオッサンである今現在の私は思い立ったのです。
「もしや、今のオレちゃんだったら作れるんじゃない?どう?」と。
思い立ったら吉日。
バックルームにしまってあったキットを取り出してパカンと箱を開けてみると……そこには黄ばんだ組立説明書とデカール、触ればポロリと落ちてしまうパーツたち。
そりゃそうである。
二十年以上、ほったらかしにしてたんですもの。みつを。
しかし、これならイケるぞ!イケるはずだ!
と私は製作に着手することを決意したのでした。
まずは弱っているであろう各パーツの補強を兼ねてサフを吹き、ベースとなるホワイトでコーティング。
それからゆっくりと作り始めたんだったんだった。
しかし、やはりパーツの劣化はかなりのもんで、組み立て途中での破損が相次ぎ、私は膝から崩れ落ちそうになること数十回。
何度も挫けそうになったが、どうにか完成にこぎ着けました。
まあ、我ながら酷いもんです。
途中で諦めた箇所も幾つかあるし、デカールもあちこち割れちゃうし、パーツが沿ってるから辻褄合わせでやるしかないし……
古いキットだから仕方がないぜ!
だなんて言い訳はダサいからしません。
ハッキリと私の実力不足が露呈した結果がこれです。
でもね。
私は出来立てのコイツが愛おしくてしょうがないのですよ。
このしょうもなさは、全て私そのもの。
これが圧倒的な現実であり実力なのだと思うとたまらなく可愛いのです。
見てるだけでワクワクしちゃうんです。
こういうところが模型作りの良いところ。
なにしろ「自由」なんです。
下手だろうとコレは私が作った私のキットなのですから。
何人たりとも侵害出来ないサンクチュアリなのです。
ああ楽しい。