果たしてどうなのだろうか

ふと思い出した。
 
そういえば、二年前の移転時。
この DOODLIN’ BARBER SHOPを “どこの国のどの時代にいるのかわからなくなるような空間” にしたいんだなんて決意していたんだった。
 
二年経ってどうなんだろうか……
果たして自分が望んだような店になってきて
いるのだろうか。
正直、自分の店を客観的に全然見ることが出来ない。
 
そういえば、映画「そして父になる」の公開時。
是枝監督のインタビューを読んで、撮影はしたけど使われなかった「子育てはピッチャーじゃなくてキャッチャーなんだ」ってセリフがあったことを知り、ふむふむ……だなんて大いに感銘を受けたんだった。
 
それから四年経って、果たしてどうなんだろうか……。
息子にアレコレ所構わず投げつけてばかりしていやしないだろうか。
バシバシ息子が投げてくる直球も変化球もスローボールも、逃げずにキャッチ出来ているだろうか。
時には、巧みなリードで、息子を導いてあげているだろうか。
うんにゃ、導いてあげているだなんて、烏滸がましいことをほざいているようじゃ、まだまだだっつーことか。
 
あれが最初で最後のチャンスだったと勝手に決めつけて、勝手にとぼとぼとポケットに手を納めてしまってはいないか……。
実力が足りないことを棚に上げ、図々しく “スランプ” などと口にしては芝居がかった苦笑いを浮かべてはいないか……。
 
何しろ、自分を客観的に見られないオッサンなもんだから、よくわからない。
どうなんだろうか……
 
そんなわけで、まぁともかく是枝監督の『海よりもまだ深く』が、とんでもなく素晴らしかったんだった。
こういう作品を作り出せる映画監督が日本にいることを誇りに思う。
 
思い出した。
私の店 DOODLIN’ BARBER SHOP に来てくださっているお客様方が、うちの店を選んだことを誇りに思ってくれるような、そんな店にしたいんだぜ!って思い上がった目標もあったんだった。
果たして、そんな店になってきているのだろうか……
 
だけどもだけど!少なくとも私は、我が DOODLIN’ BARBER SHOP に来てくださっている皆様方を誇りに思っております!
ありがとうございます。
 
それでは股旅。

すばらしくて NICE CHOICE な瞬間

五月一日っつーことで、帽子の衣替えをしました。
十三年前、DOODLIN’ BARBER SHOP を開店したときに、自分のトレードマークになればとちょっと背伸びをしてオーダーしたパナマ帽。
来年ぐらいにまたメンテナンスに出せば、まだまだ冠れそうです。
大事にして二十年はもたせようと思っております。

半年ほど前に注文していたチューバッカのフィギュアがいきなり届いて驚いたのです。
スッカリ忘れていたからです。
息子がチューバッカが好きなので注文したんだったんだったん。
けれども、それを見るなり「開けて!」とせがみ、しぶしぶ開けると激しいポージングの嵐。
瞬く間に一部破損されて白目になったのは言うまでもないです。
息子のためにと注文したはずなのに、これじゃあ本末転倒。
いたしかたない。
もう諦めて好きなように遊ばせます。
ふ〜首チョンパする日も近いだろうて。
は〜

五月が近づくとフィッシュマンズを聴きたくなるのはなぜなのでしょうか。
長年聴いていますが、生活の要所要所でフィッシュマンズがそっと脳内で流れていることがよくあるのです。
僕がよく使う「ナイスチョイス」と言う言葉も、アルバム『空中キャンプ』に収録されている大好きな一曲「すばらしくて NICE CHOICE」からの引用なのです。
この『空中キャンプ』をレコードで聴く喜び。
たまらんもんです。

二年前、この所沢市三ヶ島に移転する際。
ロゴデザインをしてくれた長友くんと、当店の備品や僕が身につけているものなどを購入させていただいている京都の園芸店『LIFETIME』店主である説田さんの協力を得て制作したWORKS & LABO. (LIFETIMEのストアブランドして日本の職人による伝統と技術や、選び抜かれたこだわりの素材を活かしたもの作り(=WORKS)に取り組み、正統的・伝統的な園芸文化に対して二次的な側面を担う「園芸サブカルチャー」を追求(=LABO.)しているさまざまなジャンルのクリエーターと交流を深め、業界を超えて「植物のある暮らし」の魅力を提案する農園芸レーベル)とのコラボTシャツを移転二周年ってことで、新色で復刻することになりました。

あんな色もいいな、こんな色もいいな〜と気も漫ろなわけですが、どうにか配色を決定し、来月十六日の移転記念日までに皆様の元にお届けしたいと思っております。

予告しておきますが、相当良い代物が出来ますよ。
是非とも遠慮なくガッシガシ期待して欲しいです。

DOODLIN’ BARBER SHOP 店主 拝

サウイウミセニ ワタシハシタイ  サウイウモノ二 ワタシハナリタイ

どうもこんばんは。
床屋のおやじさんです。
 
先日、還暦過ぎの銀渋なお客さんがいらしたとき。
『Ella and Louis』という、とっても素敵なレコードを流していたのです。
そしたら、そのお客さんがですね。
 
「学生時代、行きつけの中古レコード屋のおやじさんに、このアルバムを薦められてね。
それで聴いたんだけど『A Foggy Day』(←アルバム収録曲の曲名)にヤラレてさ。
音楽の聴き方が変わったんだよね……」
 
と仰いまして。
僕は「やっぱり人生においてそういうオッサンって必要ですよね〜!」と膝を叩きまくったのでした。
 
僕もね。
そういうオッサンにならなきゃいかんなとあらためて感じ入った次第です。
正直、ちょっとだけ、あくまでほんのちょっとだけ遠慮してました。
かといって、空気も読まずガッシガシ行く気はさらさらないですが、ちょっとだけ、あくまでほんのちょっとだけ図々しくなろうかと。
 
そのお客さんにとって、きっとステキな影響を与えてくれるであろう音楽、映画、本、ドラマ、舞台、人間……エトセトラ。
そんなもんをドシドシ薦められる床屋のおやじさんになりたいと思います。
多少ウザくてもご勘弁。
これじゃないって思われてもご愛嬌。
 
そういえば、変な床屋のオッサンがいたよな〜
 
元気かなぁ
いや、さすがに死んだだろ
案外しぶとくまだ仕事してたりして……
 
まだ、あの店の外壁はブルーグレーなのかな
十年ごとに塗り替えるって言ってたけど、今どんな色になってるんかな……
 
いつも、店の中をうろちょろしてたあの子
あの息子さんは、どんな風に成長したんかな
あんな環境で、どんな人間になっていったんだろうな……
 
いろんな音楽教えてくれたな
いろんな映画薦めてくれたな
店の中には、面白そうな本がいっぱいあったな
あのオッサン、ある意味変態だったよな……
 
そういえば、オレの大好きなあのレコード
あれも、オッサンに薦められて聴いたんだっけか……
 
正直、鬱陶しいときもあったけど
正直、これじゃないんだよな〜って髪にされたこともあったけど……笑
 
でもまぁ、あの店があって良かったな
でもまぁ、あのオッサンと出逢えて良かったな
 
名前忘れたけど……笑
 
サウイウミセニ ワタシハシタイ
サウイウモノ二 ワタシハナリタイ

そして、また流れ始めた。

どうもこんにちは。
 
 
つい先ほど、我が家の愛車を車検に出して、代車で戻ってきました。
それはもうやはりポンコツで、車内のあちこちに「禁煙」のシールが貼られているのですが、なんだか独特な甘い匂いが漂っていてテンションがダダ下がらざるを得ないわけです。
 
 
だけどもだけど、こんなときはこれだねと竹原ピストルさんのCDをぶち込んだら、その代車のポンコツ具合と自分のテンションダダ下がり具合と車内の異臭と妙にマッチして、なんだかちょっと、あくまでもほんのちょっとだけ、これイイかも!と思ってしまったのでした。
 
 
昨日、我が家の四歳児が店前のフェンスに掲げてあるプライス表を悪戯し、文字をいくつか剥がしてしまったのですが、そのときも苦笑いと共に脳内で竹原ピストルが流れ始めたのでした。
 
 
コンビニに行って、妻と僕の分ってことでスイーツを二つ購入するも、なぜかスプーンが一つ、店員さん俺が二つ共食べるとでも?と喉元まで出かかってグッと堪えたときも、どう見ても小さめのスプーンが適当なのに、巨大なパスタ用のフォークを入れられ、店員さんそれはないだろうと苦笑いで指摘したら、ほんのちょっとふてくされられたときも、竹原ピストルが流れ出す。
 
 
二十数年ぶりに映画『逃亡者』を観て、観てる最中は「やっぱおもしれ〜!」と興奮してるのだが、観終わった後、ほんの少しも何にも残っていないことに気づいて、いやむしろちょっと清々しいぞこれ!と苦笑いしたときも、竹原ピストルが流れ始めた。
 
 
GWに入籍するのですとお客さんが婚約者さんを連れてきてくれたときも、また別のお客さんが「今臨月なんで一人にしておけなくて……」と奥様を連れてきてくれたときも、またまた別のお客さんが「明日、後輩の店のレセプションなんでビシッと切ってください」と言われたときも、妻が作ってくれた息子と同じ甘口のカレーを食べているときも、毎年恒例になっている友人の命日に幼馴染みたちとの酒宴で友人の一人が今年成人する息子を連れてきてくれたときも、竹原ピストルが流れていたのでした。
 
 
中学高校時代に THE BLUE HEARTS に感化され、振り返り懐かしむことなく突っ走ってきたら、いつの間にかいいおっさんになっちゃって、果たしてこれからどうしようか……困ったな……なんつって寝言言っているような人間の気持ちを竹原ピストルは歌ってくれる。
そんな気持ちを歌にしてくれる人はいなかった。
まさか、この年齢で、まさか己の年代の代弁者的歌唄いが現れるとは思わなかった。
 
 
ありがたい。
 
 
BGMは「俺たちはまた旅に出た」(by 竹原ピストル)でお願いします。
 
 
有吉弘行が「売れるってことはね、バカに見つかるってことなんだよ……」って言ってました。
 
 
竹原ピストルさん、僕に見つかってしまいましたね。

年相応とは……

このまま順調に行けば来月上旬に四十六歳になる床屋のおやじさんは思うのである。
 
私にとっての年相応とはどんなもんなのだ……と。
 
これまたおやじ臭くなったもんだね〜
と後ろ指さされるのもイヤだ。
 
いやはや若作り痛々しい限りです!
と陰口叩かれるのもごめんこうむりたい。
 
音楽映画書籍の類いのものに関しては、そんなに心配していない。
背伸びすることもなく、若干幼稚なものに手を出すこともなく、四十路半ばに相応わしいであろうものをナイスチョイス出来ている気が一応してはいる……つもりだ。
 
心配なのはファッション全般だ。
自分が欲しいもの。
自分が身につけたいもの。
そろそろ、もう一歩踏み出すべきではないかと日々悶々としているのだ。
 
薄ぼんやりと何となくな方向性は見えてきたのだが、そこで私が選ぶ色味っつーのが少々ヤング気味なのは否めない。
かといって、渋々系の色を選ぶってのも地味になり過ぎてしまうのではと不安だ。
 
年を重ねたら、ちょいと派手目をねと考えていたのだが、どうやらそれにはまだまだ早いようだ。
イメージ的には竹中直人先輩のような佇まいを手に入れたいところなのだが、どうやらそれはかなり上級者向けらしい。
田口トモロヲ先輩的雰囲気も狙いたいのだが、あのそこはかとなく漂う知性と狂気がちいとも足りてないのが無念である。
 
自分が似合うと思っているものが本当に似合うものではないという、この痛々しい事実とまずは向き合わなければいかんですね。
 
その道はまだまだ果てしなく長く険しい。
いつの日か銀渋な床屋のおやじさんになれるよう日々精進であります。
人はそうなりたいと願ったとき、すでにその望みを半分は叶えているっつーじゃないですか。
それを信じてワンツーワンツーです。
 
 
そんなわけで、今日はDECHOのバリスタキャップに、中村商店のエプロン、それとVOIRY STORE HERRINGBONE PANTSに、履き込んだネイビーの adidas campus ってな感じの出で立ちであります。
 
BGMは、ラテン・プレイボーイズ。
ただいま読み途中の本は『羆嵐』(吉村昭著)であります。
 
 
まあ、こんな感じで今日も生きてます。
上々であります。
 
 
股旅。